飲食店情報詳細

パトゥ

◎エリア:兵庫県  ◎ジャンル:フレンチ

◎最終訪問日:2017年09月頃  ◎訪問回数:7-8回

◎評価:★★★

◎投稿者:冬

H15
 パリのヴィヴァロワ,ランブロワジー,東京三田のコート・ドールと受け継がれてきたシンプルで素材の本質だけをつかみ出す料理の伝統が,神戸に生きていることを実感できるレストランである。私を含め多くの日本人に愛される味だろう。ランブロワジーのベルナール・パコーが生み出した傑作赤ピーマンのムースにも出会うことができる。
 しかし,斉須シェフの影響が強すぎて,山口シェフの才能が十分に開花していないようにも感じられた。斉須シェフの言葉を借りれば,パトゥの山口シェフは,まだアレンジャーの段階で,クリエイターになっていないといっても良い。十分に美味しい料理ではあるのだが,それだけで,高評価はできない。
 7月に,シェフお任せコースをいただいた。これは,このレストランで最も高いコースで,8500円である。
①アミューズ:コートドールで有名な野菜のエチュベとムール貝
②パートッフルの器に,野菜と海の幸を盛り込んだもの。バジルのドレッシングで合えているが,香菜も使っているので苦手な人もいるかもしれない。
③まながつおとキャベツ,アメリケーヌソースを薄くしたようなソース:斉須シェフの影響を強く感じる料理。有名なエイとキャベツの変奏曲。魚にフュメドポワッソンを使わないのも,ランブロワジーのアイデアだったと思う。
④オックステールの赤ワイン煮込み:これも斉須シェフの得意料理。美味しかった。夏の料理ではないが,山口シェフがこの料理を愛し,年中用意しているようである。幾分ソースを軽めにして,季節に合わせているように思われた。
⑤アールグレイと柑橘類のソルベ:よい。
⑥デザート:プリン,まずまず。
⑦プチフール:数が少なく色合いが地味に過ぎるが,まずいものがない。大変よい。
⑧紅茶:これがダメ。お茶が出ていなかった。

全体に塩味が強い。また、最近のデザート重視の流れからは,デザートがやや弱く感じた。
 カードルは,鰻の寝床のような十数席だけのレストランで,豪華さには欠ける。アンビアンスは,よく気のつくサービスでよい。ただし,人手不足は覆うべくもなく,満席近くになると,なかなか料理が出てこなかった。
 トイレにPatousの写真が飾ってあり,退出のときに挨拶にきた山口シェフ(山口シェフは全員に挨拶される)に、「飼っておられるのですか」と聞くと、そうではなかった。生真面目そうな方であった。
 アクセスは,トアロードをどんどん上っていって,近くはないが疲れるほどでもないといったところにある。

H16
 同じく、シェフお任せコース8500円を、注文。やはり、シンプルで美味しかった。サービスなどの評価も前回と同じ。二十数年経ったワインを開けたが、少しヘタッテいた。
①アミューズ:前回と同じ野菜のエチュベと、ムール貝に代えて鴨の燻製
②前回と同じくパートッフルの器に,野菜と海の幸を盛り込んだもの。
③鱧に、コリアンダー風味の酸っぱくて、驚くことに冷たいジュをかけたもの。淡白に過ぎて、フランス料理らしくないが、日本人には美味しい。鮎に蓼酢という組み合わせと似る。
④ホロホロ鳥のロティ:焼いただけのようなものだが、そうした手をかけない料理の力強いうまさを狙っているのだろう。
⑤アールグレイのソルベとグレープフルーツ:前回と似るが、良い。
⑥デザート:ヴェルヴェインのブリュレ。ヴェルヴェインの香りが、あまり感じられなかった。
⑦プチフール:2種
⑧エスプレッソ:平凡。

H25
 新築のマンションの1階に転居した。シェードのブルーが印象的で、遠くからもよくわかる。店内は、丁度居心地の良い広さで、料理と同じくシンプルな美しさである。
 この日は、いつにも増して火の通しが抜群で、フランスで食べているようだった。火の通しは、このレストランが他の追随を許さない。クスクスのサラダは、余所で食べる時より野菜が多いところが良く、見た目も美しい。カモの質もよかった。シンプルで非常においしい。デザートが弱い。

H27
 シンプルで力強い料理は変わらない。しかし、段々とランブロワジーや斉須シェフの姿が彼方に見えることはなくなった。山口シェフの独自性が出ているだろう。

H28
 料理は、素晴らしい。ランブラジー以来受け継がれているように、奇を衒うところがなく、シンプルに素材の本質を味あわせてくれる。誰にでも一遍にうまいかまずいかわかる料理で、食べて頭をひねるということはない。そして、そうした分かり易い料理で、美味しいという評価を引き出せるところが、シェフの実力である。
 ただ、定番の料理があるのは店の顔となりよいのだが、若干引き出しが少なく感じる。魚には、常に緑色のソースを合わせるなどパターン化も認められる。美味しいものを作る才能はあるのだから、いろいろなものにチャレンジし大胆な試みをしてもよいのではないだろうか。どうせ美味しいものができる。ある意味美味しいものしか作れないところが、山口シェフの弱点なのかもしれない。

 この日は、チキンカツに紫蘇のソースをを添えたものが素晴らしかった。これしかないという火の通し具合だった。紫蘇のソースには斉須シェフの紫蘇のスープの後ろ姿が見えたが、後姿にすぎない。赤ピーマンのムース添えられたトマトのクーリは量を減らしすべきだろう。魚料理は皮をパリッとさせようとしてやや火が通りすぎていた。デザートは、繊細な調理で以前のような物足りなさはなかった。
 これだけ素晴らしい店なのに、この日は客が少なく、マダムとシェフ以外に、スタッフは見えない。また、食材を無駄にしないために、注文のコースは予約時に決めなくてはならなかった。神戸の良心とでもいうべき店なので、多くの人にここの料理を味わってほしい。平凡に見えて非凡な味と精妙な火の通しを評価せず、星を与えなかったミシュランには、失望した。

H29
味はやはりおいしい。特に、桃とセロリのスープが素晴らしかった。食べログの点数もまずまずで、ミシュランには星なしだが掲載されて。しかし、客が多いとは言えない。
 この理由は何だろう。はっきりとはわからない。ただ、わかりやすい美味しさのため家庭料理の延長と感じてしまうのかも知れない。この美味しさはシェフの才能を示すものだが、特別感がない。ニコやかな普遍性のみでは、客に訴えるものが少ない。突き詰めた厳しさを、加えるべきかもしれない。
 この日のコースでは、1品目のイワシのマリネと2品目の魚介のサラダが似通ってしまった。また、サラダの器になっているパートッフルが油臭かった。桃とセロリのスープは、大変おいしいが量が若干少ない方がよい。魚は、前回と同じく皮をパリッとさせようとするあまり火が通りすぎに感じた。肉料理は、ヴィジュアルが家庭料理的だった。
 センスはあるのだから、何か少し変えれば人気店になるだろうに、惜しいことだ。

■店舗情報

◎住所:兵庫県神戸市中央区中山手通3-5-10 サンシャイン中山手 1F

◎連絡先:078-392-8216

◎営業時間:11:30~16:00(L.O.14:00)、18:00~22:00(L.O.21:00)

◎定休日:火曜日

◎予算:1万円前後

◎ホームページ:http://www.hotpepper.jp/strJ000110416/

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